贈与の種類や贈与税の仕組み、そして非課税制度の解説です。FP3級では具体的な内容よりはこういうものがあるんだなーって種類を覚えていく感じです。

贈与契約とは

  • 贈与者と受贈者、お互いの合意があると贈与契約となる。
  • 贈与契約は書面でも口頭でも成立してしまう。ただし片方からの一方的意思表示だけでは認めない。
  • 書面による贈与財産の取得時期は契約効力発生日になる。

定期贈与

定期贈与とは名の通り定期的な贈与(例:毎年100万円送る)。
1年間の受贈額で贈与税を計算するのではなく、定期的にもらう権利全体に対して贈与税が掛かってくる。

負担付贈与

負担付贈与は、贈与すると同時に一定の債務を負担させる契約。差し引いた差額のみが贈与税の課税対象になる。

死因贈与

死因贈与は贈与者の死亡で発動する一種の始期付きの贈与。
相続と似ている部分があり贈与税ではなく相続税の課税対象になる。

       

贈与税のしくみ

贈与税の対象となる贈与

贈与税は、原則として個人から贈与を受けた個人に対して課される。

贈与税の課税財産

贈与財産は、贈与によって取得した金銭に見積もることができる経済的価値のある財産全てとなる。

みなし贈与財産

贈与財産以外のものでも、贈与財産としてみなす財産があり、同じく贈与税が課せられます。
保険料負担者じゃないものが保険金を受け取る場合などがこれにあたります。
また、時価より著しく低い価額で財産の譲渡が行われると贈与とみなされ、時価との差額が課税対象になる(低額譲渡)。

贈与税の非課税財産

贈与税にならない非課税財産や、別な税が課税される贈与がある。

  • 法人から受けた贈与は一時所得となり所得税の対象
  • 相続や遺贈で財産をもらった者がその年に受けた贈与(相続税になる)
  • 夫婦、親子、兄弟姉妹などの扶養義務者からもらう日常的な範囲の生活費や教育費
  • 親子間の土地の使用貸借(無償か固定資産税程度)
       

暦年課税による贈与税の基礎控除額

受贈者側において年間110万円(贈与者ごとではない)
1年間に複数の人から贈与を受けた場合は、その年に受け取った財産の合計額に対する基礎控除額は年間110万円である。

贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)

夫婦間で居住用不動産の譲渡、あるいは居住用不動産の取得資金の贈与があった場合で、
一定の要件を満たす場合、最高2,000万円の控除が受けられる。俗に「おしどり贈与」とも呼ばれる。
配偶者控除は基礎控除110万円との併用が可能で、同じ配偶者からは一生に一回だけ適用できる、まさに「一生のお願い」。

  • 贈与時点で婚姻期間が丸20年以上
  • 自らが住むための居住用不動産の授受、またはその取得のための金銭の授受であること。
  • 取得したら翌年3月15日までに居住し、その後も住み続ける見込みがあること。

贈与税の計算(暦年課税制度)

暦年課税とは暦(こよみ)の1年間(つまり1月~12月の間)にあった贈与について課税するもの。
基礎控除として110万円が使用できます。
残額に特例贈与財産一般贈与財産それぞれの税率を掛けて算出します。

課税価格特例贈与
税率
特例贈与
控除額
一般贈与
税率
一般贈与
控除額
200万円以下10%10%
200万円超 300万円以下15%10万円15%10万円
300万円超 400万円以下15%10万円20%25万円
400万円超 600万円以下20%30万円30%65万円
600万円超 1,000万円以下30%90万円40%125万円
1,000万円超 1,500万円以下40%190万円45%175万円
1,500万円超 3,000万円以下45%265万円50%250万円
3,000万円超 4,500万円以下50%415万円55%400万円
4,500万円超55%640万円55%400万円
特例贈与というのは成人した者が受けた直系尊属からの贈与を指し、一般贈与はそれ以外の贈与を言います。
       

贈与税の申告と納付

贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日までに住所地の所轄税務署長に申告する(所得税は2.16~3.15なので注意!)。
課税価格が基礎控除以下であれば申告は不要。
贈与税の配偶者控除、相続時精算課税制度の適用を受ける場合は申告が必要。
贈与税は、申告期限までに金銭一括納付を原則としている。
困難な場合は一定の要件のもと延納は認められるが、物納は認められない

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、受贈者の選択により、暦年課税に代わり適用を受けることができる制度(選択適用)。
贈与を受ける際に特別控除をして据置き(控除を超えた分の贈与税は20%の税率で支払う)し、
その後の相続時に、選択後のすべての贈与財産と相続財産の合計価額から計算した相続税に対し、
先に支払った贈与税があればそれを控除することで相続時に一本化して納税する制度である。
一度選択すると、相続時まで継続適用になる(途中で戻せない)。
つまり、控除額分を据え置いておき(逆に控除額を越えた分は仮の納税を済ませておいて)、相続時にすべて清算するといった感じです。
※2024年1月以後は、基礎控除年110万も利用できるようになります。

適用対象者

原則、贈与した年の1月1日において、
60歳以上の父母または祖父母(特定贈与者という)から成人している推定相続人(代襲含む)の子か孫への贈与に限る。
(住宅取得等資金贈与に係る相続時精算課税制度の特例や事業承継税制はのぞく)

贈与税の計算

贈与財産の累計2,500万円まで贈与税はかからず、超える部分については一律20%の税率を掛けて算出。
基礎控除110万円はもう使えません。
(2024.1の贈与からは相続時精算課税制度にも基礎控除年110万円が爆誕します!!)

相続税の計算

相続発生時に生前贈与分と相続財産を合計して相続税を計算する。

すでに本制度で支払った分の贈与税があればそれを控除した税額を納付する。
もしも控除しきれない場合は、税額の還付を受けることができる。
生前贈与財産の価額は贈与時の価額に固定される。

       

直系尊属からの贈与の非課税3種

直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

自己の居住用の家屋や家屋のための土地の取得や増改築などの資金を、直系尊属(父母や祖父母)から贈与を受けることで利用できる非課税制度です。
家屋の構造や取得契約の締結期間に応じて、一定金額まで非課税となります(具体的な金額はFP3級では割愛)。

  • 贈与を受けた年の1月1日に成人していること
  • 贈与を受けた年の合計所得が2,000万以下

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税

受贈者の教育資金に充てるための資金を直系尊属(父母や祖父母)から贈与を受けることで利用できる非課税制度です。

  • 30歳未満(教育訓練受講者はそのまま最大40歳まで継続)
  • 前年所得が1,000万円以下
非課税限度額1500万円(学校等以外の教育費は内500万円が限度)

直系尊属から結婚子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税

受贈者の結婚子育て資金に充てるための資金を直系尊属(父母や祖父母)から贈与を受けることで利用できる非課税制度です。

  • 成人以上50歳未満の者が贈与を受ける
  • 受贈者の合計所得が1,000万以下
非課税限度額1,000万円(結婚費用は内300万円)

外部リンク:国税庁,スタディング FP講座

       

それでは過去問を解いてみましょう。

問①③⑤は〇✕でお答えください。
問① 贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、贈与を受けた日において、贈与者との婚姻期間が20年以上なければならない。
問② 「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を受けた場合、受贈者1人につき(  )までは贈与税が非課税となる。
  1. 1,000万円
  2. 1,200万円
  3. 1,500万円
問③ 相続税法の規定によれば、子が父から著しく低い価額の対価で土地の譲渡を受けた場合、実質的な贈与とみなされ、原則として、当該対価と譲渡を受けた土地の時価との差額に対して贈与税が課される。
問④ 個人が死因贈与によって取得した財産は、課税の対象とならない財産を除き、(  )の課税対象となる。
  1. 贈与税
  2. 相続税
  3. 所得税
問⑤ 贈与税の納付については、納期限までに金銭で納付することを困難とする事由があるなど、所定の要件を満たせば、延納または物納によることが認められている。
解答

問① 〇 問② 1 問③ 〇 問④ 2 問⑤ ✕

Wiki技能士

相続と贈与はFP試験において結びつきが深いです。
というのもみんな相続の事を考える時代になってきたため、
生前のうちの贈与を考えるんですよね。
そのためFPとして非常に重要な知識となります。