短期譲渡所得と長期譲渡所得の違いは定番です。各種条件などもしっかり覚えましょう。
不動産の譲渡所得
個人が土地・建物等の売却により得た譲渡所得は分離課税となり、他の所得と分離して所得税・住民税が課税される。
譲渡所得の計算
譲渡所得金額=譲渡価額-(①取得費+②譲渡費用)
①取得費
取得費=取得に要した金額+設備費・改良費-償却費相当額
※取得に要した金額に固定資産税等は含まない。
概算取得費
取得費が不明のときなどは、譲渡価額の5%とすることができる。
相続税の取得費加算の特例
相続により取得した財産を、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に譲渡したときは、支払った相続税の一定金額を取得費に加算することができる。
②譲渡費用
譲渡に直接要した仲介手数料・賃借人への立退料・建物の取壊費用などが譲渡費用になる。
固定資産税などの費用は含まれない。
短期譲渡所得と長期譲渡所得
不動産の譲渡の場合、短期所有と長期所有で税率が異なる。
- 長期譲渡所得:譲渡のあった年の1月1日において所有期間が5年を超える土地建物等の譲渡所得
- 短期譲渡所得:譲渡のあった年の1月1日において所有期間が5年以下の土地建物等の譲渡所得
所得税 | 住民税 | |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% |
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% |
居住用財産の譲渡の特例
居住用の不動産は税の優遇があります。
居住用財産の譲渡の特例の共通事項
- 居住用財産の各種特例は3年に1回しか適用できない
- 配偶者、直系血族、生計を1にする親族に譲渡する場合は適用できない
- 住まなくなってから3年後の12月31日までに譲渡すれば適用できる
1.居住用財産の3,000万円特別控除
所有期間を問わず、主たる居住用財産(土地建物)の譲渡益から3,000万円を控除することができる。
2.居住用財産の長期譲渡所得の特例(軽減税率の特例)
譲渡した年の1月1日で所有期間が土地家屋ともに10年超であることを条件に、3,000万円特別控除後の所得金額に対する税率が以下の通りに軽減される(併用できる)。
所得税 | 住民税 | |
---|---|---|
譲渡所得6,000万円以下の部分(軽減税率) | 10.21% | 4% |
譲渡所得6,000万円超の部分 | 15.315% | 5% |
3.特定の居住用財産の買換えの特例
個人が居住用財産を買い換えた場合、譲渡した資産はその譲渡が無かったものとして課税が繰り延べられる。
3,000万円特別控除や軽減税率の特例との併用は不可。
譲渡資産の要件
- 譲渡した年の1月1日現在で所有期間が10年超
- 譲渡者の居住期間が通算10年以上
- 譲渡対価の額が1億円以下
取得資産の要件
- 譲渡の前年初めから、翌年末までに取得する事
- 自己が居住する事
- 面積が建物50㎡以上、土地500㎡以下
4.被相続人の居住用財産(空家)の譲渡所得の特別控除
これは相続人の居住用財産を被相続人が譲渡する場合の特例です。
なので自分の居住用財産ではありませんから誤認注意です。
相続開始直前までに被相続人が居住していた土地家屋を、相続や遺贈で取得した場合、一定の要件のもと譲渡益から3,000万円まで控除することができる。
(R6.1.1以後の譲渡より、取得する相続人が3人以上になる場合は1人あたり上限2,000万円)
適用要件
- 1981.5.31以前に建築された家屋であること
- 相続発生日から3年後の12月31日までに譲渡すること
- 譲渡対価が1億円以下であること
- 相続時から譲渡時までに事業用・貸付用・居住用に供されていないこと
- 建物を壊さずに譲渡する場合は、新耐震基準に適合すること(リフォームしても可)※
※R6.1.1譲渡分より、譲渡日の翌年2月15日までに耐震基準適合するか家屋を取り壊しても可
5.居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除
「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除」と 「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」があります。
1.居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除
- 1月1日現在での所有期間が5年超の居住用財産を譲渡し、
- かつ新たに居住用財産を取得して一定期間に居住する場合、
- 譲渡により損失があったときには、
- 一定の要件のもと、ほかの所得と損益通算でき、
- 控除しきれない部分が残った場合は、
- その年の翌年以後3年間、
- 各年分の総所得金額から繰越控除できる。
2.特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除
- 買換え資産の取得は要件ではなく、譲渡のみで発生
- 譲渡資産に対して返済期間10年以上の住宅ローンが残っていること
- 控除できる金額は、借入金残高-譲渡価額=限度額となる
そのほかの部分は「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除」と同じになる。
外部リンク:法務省 ,スタディング FP講座
それでは過去問を解いてみましょう。
問① 被相続人の居住用家屋およびその敷地を相続により取得した被相続人の長男が、当該家屋およびその敷地を譲渡し、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」の適用を受けた場合、譲渡所得の金額の計算上、最高()を控除することができる。
- 2,000万円
- 3,000万円
- 5,000万円
問② 個人が自宅の土地および建物を譲渡し、「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けるためには、譲渡した年の1月1日において当該譲渡資産の所有期間が(①)を超えていることや、当該譲渡資産の譲渡対価の額が(②)以下であることなどの要件を満たす必要がある。
- ① 5年 ② 1億円
- ① 5年 ② 1億6,000万円
- ① 10年 ② 1億円
問③ 自己が居住していた家屋を譲渡する場合、その家屋に自己が居住しなくなった日から(①)を経過する日の属する年の(②)までの譲渡でなければ、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」の適用を受けることができない。
- ① 1年 ② 12月31日
- ① 3年 ② 3月15日
- ① 3年 ② 12月31日
問④ 相続により取得した土地について、「相続財産に係る譲渡所得の課税の特例」(相続税の取得費加算の特例)の適用を受けるためには、当該土地を、当該相続の開始があった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後()を経過する日までの間に譲渡しなければならない。
- 2年
- 3年
- 5年
問⑤ 土地・建物等の譲渡に係る所得について、(①)における譲渡資産の所有期間が(②)を超えるものは長期譲渡所得に区分され、(②)以下であるものは短期譲渡所得に区分される。
- ① 譲渡した日の属する年の1月1日 ② 10年
- ① 譲渡した日の属する年の1月1日 ② 5年
- ① 譲渡契約の締結日 ② 3年
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解答
問① 2 問② 3 問③ 3 問④ 2 問⑤ 2